星空と、色えんぴつ

日々の小さな発見や、ちょっと面白いこと、楽しいこと。

筒井康隆「霊長類南へ」を読みました。

日本のSF作家と言えば、

やはり星新一さん、筒井康隆さん、小松左京さんが

御三家ですよね。

 

私自身は、星新一さんや小松左京さんの小説に

ハマった時期はそれぞれあったのですが、

筒井康隆さんの小説に対しては、個人的に苦手意識がありました。

子どもの頃、かなりグロテスクな作品を読んだのが

ちょっとトラウマ気味になっていたせいかもしれません。

 

……が、筒井さんの小説のファンである知人の意見を聞いて、

少しその意識をあらためました。

 

知人いわく、「ほかの作家は、何冊か読むと、

その人の傾向が見えて、だんだん飽きてくるが、

筒井康隆に関しては、傾向というものが見えないほど

作風が幅広い」……と。

また、とてもIQの高い方で、「あの人は天才」だと。

 

……確かに、型破りな作品を書き続けるなんて

普通の作家にできるような芸当ではないのは

じゅうぶん分かっているつもりです。

 

 

そこで知人に借りて読んだのが、

「霊長類南へ」という小説でした。

これはわりと普通のSFだから……とすすめられまして。

およそ50年前に出版された本のようです。

 

「霊長類南へ」のあらすじを簡単に述べると、

核戦争が起こり、滅んでいく人類の話です。

 

グロい場面は今でもやっぱり、

読むのに苦痛を感じましたが^^;

あまり想像しないようにして読めばいいんですけどね……。

だけど本当に核戦争が勃発したら、

「残酷なのは嫌」ではすまされません。

 

 

現実の世界で、「まだ未来があり、先の希望がある」ということが、

どれほど有難いものなのか。

この小説を読むことで、思い知らされたような気がしました。

それほど、リアリティのある緊迫感や、絶望感をおぼえたのです。

 

人類に未来がなければ、

過ちの教訓を次の世代に残すことすらできない。

そのことを教えられた小説でした。

 

ほかの人との「間」……関係性があってこその人間だから。

受けとめてくれる人々がいなければ、

人は、己の仕事をする意味さえ持つことができないのですね。