他人の夢の話って、話す本人ほど周りは面白いと思わない……と
よく言われますが、逆に言えば、どうして、
本人にとっては、それが興味深く、面白く感じるのでしょうね。
もしかしたら、やはりそこには、夢を見た本人にとっての
無意識の謎を解くカギが含まれているからかもしれません。
個人的にユング心理学が気になっていて、
河合隼雄先生の本を繰り返し読んでいるのですが、
その奥行きの深さには、ぞくぞくするような感覚をおぼえます。
たとえ一見、荒唐無稽であっても、
「ただの夢」と、一笑するようなものじゃないと思います。
たとえば夢の中で、知人のAさんに会って、
ああ、これは昨日Aさんと連絡したから
そのまま夢に出たんだな、と納得するようなことがありますが、
ほかにも色んな人と会ったり関わったりしている中で、
どうしてわざわざAさんが選ばれて、夢に出てきたのか
ということに注目すべきなのかもしれません。
私たちは心の中に、いろいろな気持ちを抑圧していますが
実は、抑圧しているものが「悪い感情」とは限らないようです。
たとえば、自分を基本的に「嫌なヤツ」だと思っている人は、
自分の心に優しさや温かい感情があっても、
気づかなかったり、素直に認めたくなかったりしてしまいそうです。
もちろん、自分は「○○な人間だ」という
アイデンティティを持つことはとても大切なのですが、
その陰では、抑圧された気持ちが表に出たがっているし、
背後にいる本当の自分(自己)は、アイデンティティによる偏りを
修正したがっている、とユング心理学では言われているようです。
夢の中に出てきたAさんは、現実のAさんではなく、
自分の心に抑圧された、Aさんに似ている部分、
Aさんのキャラクターから連想される部分が
自我の方へと出てきたくて、登場しているのかもしれません。
しかし、それをそのまま自我が受け入れるのは困難なことで、
うまく行かなければ、自分が壊れてしまうかもしれません。
抑圧だって、その人なりの理由があって行われているのだから。
……ですが、「隠されている自分」が悪い自分とは限らない、
ということだけは、覚えておきたいなと思ったりしています。